職人

N0WHereNowhere2005-09-14



昨日「日経スペシャル ガイヤの夜明け」を見た。いわゆる2007年問題というやつだ。本当に団塊の世代がごっぞり定年を迎えたら、社会の雰囲気はどのように変わるのだろう。▼番組のテーマは職人の技の伝承だった。同じ鉄を削っても、若手旋盤工の技と老練なる職人の手仕事には雲泥の差があった。▼私の父は溶接工であった。飛び散る火花と閃光の中、面をかぶらず、サングラスをかけず、仕事をしていた。新宿駅西口にある日赤の献血センターなどは、親爺全盛期の仕事である。▼旋盤工であり、作家である小関智弘さんがいる。齢七十を過ぎ、町工場は引退したが、筆の進みは変わらず、良い本を出されている。小関さんのお宅は大田区の山王にある。高級住宅街の響きがあるが、どっこい、大森の情緒が残る木造の二階建て。いかにも職人が住んでいそうな家だ。▼2階の仕事部屋で、工場から帰ってきた後、歯を食いしばって執筆活動をした。おかげで文章を綴るたび、本を出すたび、歯が一本ずつ抜けていったという。その歯が抜けたと言う冬でも日当たりのいい部屋で、私のようなはなたれ小僧に、小関さんは江戸前寿司を振舞ってくれた。▼職人の思いと言うものは、金になるならないではない。武士(もののふ)の域にあるのだ。そして、そこには侍の血を継ぐ日本人にしか出来ない仕事があるのだろう。▼小関さんや団塊の世代ラスト・サムライにしてはいけない。私もどこかでもののふのようにありたいと常々思っている。