人間交差点

N0WHereNowhere2005-12-18


友に尋ねた。「10年前の自分が、今の自分に出会ったらどう思うだろうか」と。▼私の10年前は、立ち居振る舞いに見識、教養、人格が追いついていない状態、つまり、人間ハイパーインフレ状態だった。それは、それでよかったのだろう。ただ、その時、その状態をインフレだと気付き、実態とインフレの差を埋める努力を一生懸命すればよかったのだ。しかし、わたしはそれがバブルだとは気付かなかった。▼ふと10年前の私が顔を出した。今の私をとても腹立たしく、とても悲しい目で睨みつけていた。▼1年ぶりに長崎の先輩に会った。酒席を共にする。時の流れる速度について話題になる。彼は、私が大学1年の時の4年生だ。キャンパスの住人だったのはもはや20年も前のことである。あれから同じ時間が経つと、先輩は還暦を迎える。▼飲み終えた私たちは、馬場からわざわざキャンパスまで足を伸ばす。夜10時過ぎの大隈講堂。木枯らしが放射線の如くコートをすり抜けていく。そんな冬の寒さを屁ともせず、学生たちが、男も女もなく、腹の底から声を振り絞る。あるサークルの納会が終わり、代替わりの儀式をしていたようだ。100人を越える若者たちの歌声。都の西北、紺碧の空。こんなこと某大学でやったら住民・警察・大学当局を巻き込んだ大問題になる。住民の抗議があるわけでもなく、目の前の詰め所から飛んでくる守衛もいない。それがこの街の寛容さであり、日本で唯一の大学であるに違いない。▼この変わらぬ人間交差点が私に与えてくれる物は計り知れない。ありがたいことだ。もう少しがんばろか、という気になる。▼10年前の私へ。変わるべきはあなたの方だ。心が貧しいのはあなたの方だ。私はあなたを睨みつけたりはしない。寛く受け入れる。そして、あなたの目線があるからこそ、私は今日も歩みを前に進めることができる。ありがとう。