本多静六

N0WHereNowhere2006-01-19

最後は東大の農学部の教授だった。引退後は執筆活動で名を成す。既に亡くなっている。彼は生活をギリギリまで切り詰めて、コツコツコツコツコツコツコツコツお金をためて、やっとこさ作った「余裕資金」を、株や山林開発に当てた。結果として、あくまで結果として、これが莫大な資産を作ることになった。そこに描かれているのは、当たり前の風景だった。給与の25%をいかなる理由があろうとも貯蓄に回す。当時の彼には多くの家族がいた。にもかかわらずだ。これはものすごく大変なことだ。手取りが20万円ならば5万円。ボーナスも同様。年収の四分の一だ。一人暮らしでもかなり大変だろうに、これを大家族でやっていた。食費に困ってもやった。当然、お金は貯まる。当時は右肩上がり。しかしそれにおどらされることなくその後も、彼は自分のやり方を変えなかった。そして、それは莫大な資産家になってからも、変わらなかった。▼ライブドアショックを各国が伝えていた。ライブドアは中国語で“活力門”というらしい。しかし、結論は活力がいずる門ではなかった。とうとう死人も出た。▼株に信用取引という制度がある。これによって、余裕資金がない者が、少ない手持ちの現金や株を担保に、持分以上の株の売買ができる。そして、株取引の成果で精算する。一方で、担保に入れた株が値下がりすれば、追証(追加担保の差入れ)が必要になる。冷静に考えればリスキーな制度だ。▼IT企業の資産の時価総額が、急激に膨れ上がった背景には、株細分化の連続にあったといわれている。いわゆる伝統ある一流大企業は一株あたりの単価が100万円単位。余裕資金の乏しい者には手が出ない。そこで、ワンコインでも変えるまで株式分割がなされたライブドア株は、買えない者たちの福音となった。▼そこにネット証券登場。「余裕資金がなくても担保入れてくれりゃあ、いくらでも貸しますぜ」と。ところがどっこい当のネット証券(マネックス)は、早々にライブドア株の担保価値を0にした。待っているのは追証だ。さあ、大変だ。▼東京証券取引所は、見方を変えれば、江戸時代の丁半賭博場だ。最後は身包みはがされたたき出される。それだけで済むならいいほうだ。「借金の形」に何を要求されるか分からない。そして、人間がヤクザになっていく。あんなにいい人が、一回ポッキリの博打のために泣く泣く犯す罪。大岡越前人情話。それを今やってしまうのが人間のアホさ加減だ。時代が変わっても、やってることは同じなのだ。▼お金にはお金の確たる現実がある、ようだ。私も勉強中のため偉そうなことは言えない。しかし、はっきりわかるのは、はじめから楽して儲ける方法はないということだ。コツコツ積み重ねてきた物がある臨界点を越えると爆発的に巨額化する瞬間があるようだ。人はその巨額化の瞬間しか見ていない。いきなり巨額化するわけないんですよ。仮にそんなことがあっても長続きしないんですよ。▼堀江さんはとても良いことを教えてくれた。心底感謝しよう。ありがとうホリエモン
▼ちなみに私は野村のバーチャル投資で「ゲーム」をしている。http://www2.nomura.co.jp/vstock/VirtualServlet
私はたまたま、こうなる前日にライブドア株132株を損切りという英断を下し、難を逃れ、オリックスを買えるだけ買った。ああ、良かった。あくまでゲームである。しかし、これはゲームに留めておくからこそ気楽なのだ。▼ゲームを始めて気付いたことがある。始終株価が頭をよぎるのだ。今いくらかと。中毒だ。射幸心の檻だ。ゲームでさえこうなのだから、現生を注ぎ込む者は、デイトレーダー状態だろう。余裕資金ならまあ、失っても仕方ないかとなるが、結果として借金をして株を買うことになってしまった者はそうも行くまい。▼そうなると本業がおろそかになろう。本業がおろそかになれば、お金は愚か、何も残らなくなる人生が待っている。▼ああ、きっとそれが「借金の形」なんだろうな。余裕資金のない者にとって株は、モモの灰色の男たちよりたちが悪い。早く損切りで出直したほうが良い。今、世の中にはそんな人たちが山ほどいることだろう。私には中途半端な額のお金がなくてよかった。信用取引に手を出さずに済んだ。お金のないありがたみを強く感じる。▼株を買うには本田静六張りに、用意周到かつストイックな準備が必要なのだろう。そういう意味で、私はまだまだ株を買える身分ではない。株を買うことを最終目標にするつもりはないが、株を買える身分になろうと考えている。少々の努力も始めている。先は長いか、ため息か。


私の生活流儀

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