「新たな出発」の現実

N0WHereNowhere2005-08-18



NPO法人 ニュースタートhttp://www.new-start-jp.org/)には、現在80名近い若者が入寮し、生活している。入寮する前のレンタル活動に月額10万円。入寮すれば、寮費が月25万円、年間300万円。高額の費用を親が負担している。そのために家を売る親も少なからずいるという。2年で退寮し、自活するのが目標だが、それはとても難しいことだ。▼ニュースタートの活動を報告する本がある。『「引きこもり」から「社会へ」〜それぞれのニュースタート』(荒川龍・学陽書房)。そこには数例の自立に至った若者の姿が描かれているが、それはニュースタート・ドリームだ。つまりロト6で4億円に当たるようなものなのである。この本にすべての希望を託すのはあまりにも危険である。▼元ひきこもりのスタッフから聞いた話では、多くの入寮者はいわば「中途退寮」する。なぜか。両親が経済的負担に耐えられず、やむなく家に戻るのだ。そして、その後、彼らがどうなってしまっているのか、ニュースタートは追跡調査をしてない。▼6月。私はボランティアという立場で「若者自立塾」の企画立案を担当した。(http://www.jiritsu-juku.jp/list/index.html)そこで一緒に組んだスタッフがポツリと言った。ひきこもっている家からニュースタートに出てきたはいいが、ニュースタートと社会の間にもう一つ階段を作らないと、結局社会とはつながれない。▼私の勝手な感想。ニュースタートに行けば何とかなる、というのは嘘である。そのリスクを両親は知っているのか。兎にも角にもどうにかして欲しいという両親の現実があるのだろう。▼そこで思うのは、もっと早い時期に何とかならなかったのか、だ。ひきこもりは子どもの問題でもあると同時に、親の人生が問われている現象なのである。▼ニュースタートの広報ツールには、進学塾が掲げるような「進路実績」が出ていない。そこに行ってどうなるか分からないようなところに、高額な金銭を出してまで、子どもを預けてしまう。両親はそこまで追い込まれている。しかし、そのことを差し引いても、冷静に考えれば腹が立つ。高額負担の後、自立は果たせず、また家に戻ってくるのだから。▼ニュースタートとは、今のところ、ひきこもり系ニートたちのシェルターに過ぎない。

「引きこもり」から「社会」へ―それぞれのニュースタート

「引きこもり」から「社会」へ―それぞれのニュースタート