恋路島

N0WHereNowhere2005-09-20



水俣湾の中に今は無人島になってしまった島がある。恋路島という。有機水銀汚染のど真ん中に位置した島だ。▼この無人島に渡り、キャンプをしたことがある。最低限の食料のみ持ち込み、素材は海に求める。びな貝が絶品だった。魚も小ぶりだがうまかった。土地の人々は海こそ命の源だった。▼水俣の海はとてもきれいな海だった。そこにはヘドロのへの字もない。ヘドロの海がここまで蘇ることを誰が思い描いただろうか。▼しかし、かつての豊饒の海は未だそこには戻っていない。見掛けはきれいだが、生息する魚の数は圧倒的に減少したままだ。▼何かが起きてから、我々がその意味をわかるようになるまではとても時間がかかるのだ。今のことは10年くらい経ってみないと分からないのだろう。環境も、社会も、自分の人生も。▼だから今すぐ分からなくてもよいのだろう。だからこそ、今すぐ分かろうとするのは愚かな行為なのではないだろうか。人はそこまで偉くないのだ。