「何もしない」をする

N0WHereNowhere2005-07-25



梅雨時に見た変な風景が忘れられない。地下鉄東西線妙典駅から伸びるまっすぐな道。その道は湾岸道路を横切り、海に通じるはずである。しかし、こともあろうに道の先には山が。埋立地を海に向かって走っているはずなのに、緑茂る明峰がそびえる。 ? ▼山の名は「行徳富士」。地図には名称も、等高線も入っていない。ところが目の前には確実に存在する山がある。見事なまでに積み上げられた違法建設残土。その標高は38メートルにも及ぶ。富士を見上げるその度に、あぁ、この山は私だ、という思いがこみ上げてくる。▼自他に対する不作為の堆積。私の中の山は、行徳富士の何倍も立派なものである。何とか山を切り崩し、不作為という残土を処分してしまいたい。最後の塵芥まで消してしまいたい。そう思うのが私の常であった。▼だから、その山を横目に「何もしない」をするのは、とても難しいことだった。今日は無事に無為な一日を送ることができた。私の富士が、私の中の地図に明記されたのであろう。